【レビュー】澤村伊智短編集 「ひとんち」

積まれた本とコーヒー ブックレビュー

はじめに

今回はブックレビューをしていきたいと思います。

澤村伊智先生のご著書「ひとんち」です。

近所の図書館でホラー特集の中に並べられていたのが出会いでした。

読み終えてみての感想

夏にぴったり、あっさり系ホラーという印象です。

2020年の夏、澤村伊智先生を知れて良かったと思ったそんな夏でした。

但し、油断してるとビリっと辛みがくるのでご注意。

本書構成

短編集のため各話完結のオムニバスとなっています。

  • 全8話
  • 各話タイトル
      1. ひとんち
      2. 夢の行き先
      3. 闇の花園
      4. ありふれた映像
      5. 宮本くんの手
      6. シュマシラ
      7. 死神
      8. じぶんち

こんな人におススメ

  • 一日の読書の時間が限られている人。
  • ホラーにも手を出したいけど読み切れる自信がない人。

各話あらすじと感想

ひとんち

あらすじ

  • 学生時代に仲が良かった三人の女性。
  • 裕福な男性と結婚したという一人の家に遊びに行くことに。
  • 最初は思い出話に花が咲いていたのも束の間、各家庭の”習慣”に話が及ぶ。
    • 砂糖入りの麦茶。
    • 元彼が作ってくれた白濁して酸っぱい彼の母譲りの”特製カレー”。
    • テレビのリモコンを”ビシビシ”と呼ぶ。
    • ワンちゃん。
  • そこで、バツイチ子持ちの一人が元旦那の実家で遭遇した不可思議な”習慣”を打ち明けて・・・。

感想

  • 30を過ぎて本の内容がすんなり入ってこなくなっていたのですが、このエピソードは別です。
    • 頭の中で映像が再生されるような分かりやすい描写。
    • そしてバランスの取れた話。
  • 最後のオチも(ホラー的に)綺麗なエピソードで、これだけでもご一読の価値ありです。

 

夢の行き先

あらすじ

  • 小学校五年の二学期、誕生日の夜に少年は”悪夢”を見る。
  • 薙刀をもったババアに自宅マンション中を追われるという内容を三日続けて見ることに。
  • クラスメイトに話を聞くと、その彼も同じ悪夢を見ていたと言う。
  • どうやら”悪夢”は少年のクラスを順番に移動しているようだ。
  • 更にババアではなく、青い犬に追われる”悪夢”を見たクラスメイトも現れて・・・。

感想

  • これはかなりあっさり系。少年探偵物の彷彿とさせます。ホラー苦手な方に(いるのか?)おススメ。
  • 二段ベッドって嫌じゃないですか?
  • お兄さんは少年に優しくした方がいいと思う。

 

闇の花園

あらすじ

  • 彼は、ある小学校の四年二組を臨時教諭として受け持っている。
  • 彼は赴任以来ある女子生徒を気にかける。
  • 彼女は真夏でも全身黒の服を身に纏い、他のクラスメイトと一切関わらず、給食にも手を付けず、ただ学校に来ているだけという状態。
  • 三者面談の日、彼女の母の異常さを見た彼は、虐待を疑うが・・・。

感想

  • 「ひとんち」というタイトルから、サイコパス物を連想していたのですが、ちょっと裏切られます。
  • 作者さんの守備範囲の広さがうかがえます。
  • ホラーよりも、ファンタジー寄りだと思いました。

 

ありふれた映像

あらすじ

  • パート帰りの主婦は子どもを預かってくれた主婦仲間とスーパーで買い物を済ませる。
  • 目を離した隙にいなくなった子どもが鮮魚の販促映像に不思議な物が映っているという。
  • 目を凝らすと、映像の中に”死体”と思しき映りこみが。
  • スーパーの映像制作部門に勤める旦那が調査したところ、問題の映像は下請会社に依頼したもので、担当ディレクターは退職済みだという。
  • 元ディレクターの手がけた過去にスーパーで流れた販促映像を見ると・・・。

感想

  • いわゆる「あなたの日常にも”狂気”は潜んでいますよ」系のお話。
  • 販促CMが切り口とは初めて読みました。
  • フジテレビの「トリハダ」シリーズにラインナップされてても良さそうなテイストでした。
    • 「トリハダ」ラインナップなら「ひとんち」も捨てがたいか。。。

 

宮本くんの手

あらすじ

  • 雑誌編集者に勤める主人公は夕食からオフィスに戻った時、同僚・宮本くんの手が異常に荒れていることに気づく。
  • 人柄も良く、仕事内容も問題の無い宮本くんだが、彼のデスクは雪のように積もる掻きむしられた手の皮と、ごみ箱には血で染まる絆創膏がぎっしりと詰まっていた。
  • そんなある日、先の大地震が発生。
  • しばらく音信不通だった宮本くんが復帰すると、彼の手は綺麗に完治していた・・・。

感想

  • 最後のオチは宮本くんの人間性がなせる業なのか、妄想に取りつかれてそうなったのか。
  • 「ありふれた映像」にも通じる、人間の持つ異常性が垣間見えるエピソードでした。
  • 主人公が食べたラーメンが味噌なのか気になる。

 

シュマシラ

あらすじ

  • サラリーマンの主人公は職場での雑談で、昔集めていた食玩の話をしていた。
  • ある日、彼の元に食玩マニアの男性が訪れ、”シュマシラ”というUMAをモチーフにした食玩の画像を主人公に見せた。
  • 男性は食玩のモチーフになった”シュマシラ”のルーツを探りたいという。
  •  “シュマシラ”探しに協力することになった主人公に、新たな協力者が現れて・・・。

感想

  • こちらは「闇の花園」と同様、ファンタジー寄りな気がします。
  • 謎が謎を呼ぶ感じで、割とサクサク読める内容になっています。

 

死神

あらすじ

  • 主人公の男性は求職中。ある日友人から様々な動植物を預かるように頼まれる。
  • 何日経っても友人はペットを引き取りに来ず、次第に友人の”ペット”が次々と不審な死に方をするようになり・・・。

感想

  • 中々にピりっとする内容でした。
  • いわゆる不幸の手紙をモチーフにした作品ですが、シンプルで誰でも知っている内容だけにより怖さが滲み出ます。

 

じぶんち

あらすじ

  • 男子中学生の主人公は学校行事のスキー合宿に出かけていた。バスが渋滞にはまり、気づけば夜10時。家族が迎えに来ていない事に嘆息しながら帰路に就く。
  • 帰宅すると家には誰もおらず、不気味なほど静かだった。
  • 不審に思いつつも冷蔵庫を見ると、そこに「ごめんなさい、先に行きます。」という母親のメモが・・・。

感想

  • 最後の最後にそれかい!
  • 理不尽にして奇想天外。
  • ちょっとこの作者、守備範囲広すぎ。
  • 星新一のショートショートの雰囲気を感じるような気がします。

 

挫折した本もあります

同じくホラー特集の書棚にあった「怪談のテープ起こし」という本も借りたのですが、これは怖すぎて1章を読んで返却しました。

30過ぎの男が怖くて寝られなくなるって中二の頃に読んだ「墓地を見下ろす家」以来ですよ。

これだから読書って面白いですね。

 

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